企業内でアウトプット文化を広めるためには

こんばんは。
私は自社内でエンジニアブログを立ち上げ運営しているのですが、運営にあたって寄稿者の「巻き込み」に悩みを感じTwitterでつぶやいたところ、多数のコメントを頂戴しました。

素晴らしい意見を多数頂戴したので、今後の参考になればと思い記事としてまとめたいと思います。

背景の説明

上記ツイートだけでは状況の説明が難しいので、補足します。

私は昨年(2021年)に自社のエンジニアブログを立ち上げました。
(本記事では敢えて社名・サイト名は伏せたいと思います)

エンジニアブログ立ち上げについて

エンジニアブログ立ち上げの目的は、以下のような感じです。

  • 自社クラウド事業の認知度を高めること
  • 発信することによってのエンジニア育成を目指したい

もちろん、認知度の向上によってゆくゆくは案件獲得に繋がれば嬉しい、といったスタンスとなります。

クラウド事業は あくまで社内の中のいち事業という位置づけのため、エンジニアブログは自部署(私)で運営しており全社的なコミットメントはありません。しかし執筆者は広く社内に募集するといったスタンスを取り、自部署(私)の承認を経て記事を公開するルールとしています。それは発信意欲のある社員からの寄稿を広く募集し、発信することによる成長機会を得て欲しい、また個人のキャリア開拓に繋げてもらいたいという思いからとなります。

なお元々私が社内コミュニティの運営を行っていたため、エンジニアブログ立ち上げ当初の記事に関しては コミュニティに理解がある「アーリーアダプター」に声を掛けて執筆いただきました
その結果、エンジニアブログの立ち上げは一定の成功を収めたと考えています。

但し、社内の「アーリーアダプター」はごく少数。
執筆者数、記事数とも頭打ち感があるので更なる発信者を増やしたい、と考えています。

そんな中、社内のメンバーより「みんなエンジニアブログなんて書いている余裕は無い」と思っているんじゃないですか? というコメントを頂戴して、解決策はあるのかなぁと素朴な疑問を頂いた。
それがツイートの背景です。

自社の文化

いわゆるシステム・インテグレーターに所属しております。
安定志向で長く勤める社員が多い、いわゆるJTCの分類 になるかと思っています。
プライベートを大事にしてサラリーマンをするには良い会社だと思います。

なお業務の忙しさは人それぞれですし、日本企業としての労務管理もしっかりと行われています。
発信するモチベーションさえあれば、個人の裁量でも業務調整してアウトプットできる状況だろうとも思っていますし、モチベーションがあればOFFの時間にもアウトプットする意欲が沸くのではとも思います。

皆様から頂戴したコメント

さて、ここから皆様から頂戴したコメントを分類して転記したいと思います。

同じことで悩んでいます

実は私の視点ではAWS Top Enginnerに認定されている方って、2種類いると思っています。

  • 実務内で高い技術力を発揮している人
  • 技術力を外部に対してアピールできている人

AWS Partner Ambassadorはアウトプットできる人であることが要件ですが、AWS Top Engineerに関しては必ずしもアウトプットできることが要件だとも思っていません。アウトプットできることが望ましいですが、むしろ前者の方が技術力は高いのではとか思ったりして、ね。

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エンジニアブログの記事発信って、以下のどちらかですよね。

  • 書きたい人、発信したい人のモチベーションに任せる
  • 輪番制を敷き、部署内・部署間で持ち回りで書く

自社の場合は現時点では前者です。
単純に部署間の調整・巻き込みが大変だから、あと記事の品質面にも懸念を抱いたというのが理由です。
(ここは自社の課題と認識しました)

組織のメンバーが皆同じ方向を向くことが理想なのですが、ある程度以上の規模感になると困難ですよね。

当社の場合もそうで、各部署の事業内容・視点は異なりますので、私が「クラウド事業の認知度を高めるためにエンジニアブログを書いてください」とお願いしたとて、なんで他部署のために協力しなくてはならないんだ、と思われてしまう可能性は高いです。

はい、多忙でアウトプットは無理です・・・

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大変ですね・・・
私も結構忙しいので、お気持ち察します。。

ただ、そんな方にもお勧め、秀逸なコメントも頂戴しました。ありがとうございます。

素晴らしいとしか言い様がないです・・・
ただネタ帳に書いておいても、実際の「やってみたこと」や手順は時間が経過すると忘れてしまうんですよね。

なので私は(苦しいながらも)なるべく早めにアウトプットするように心がけてはおります。

そもそもアウトプットできるスキルを持つ人は希少

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そうなんですよね。これは私の肌感覚と一致しています。

そもそもブログ記事としてアウトプットした経験が無いので、どのように文書を組み立てて書いたら良いのかわからない。またブログツール(WordPressなど)を使ったことも無いので、重い腰が上がらない。

社内向けにWordPressの操作マニュアルを作ったり、WordPress操作方法の動画を制作したり、はたまた社内セミナーを開催して文書の構成の仕方も解説したことはあります。あまり効果無いかなという感想ではあるのですが、今後も継続的な取り組みとして行っていきたいと思います。継続は力なり、ですね。

確かに私自身も別に対価を求めてアウトプットを始めたわけではないですね。
最初の動機は、業務での調べ物でブログ記事にお世話になっているので、自分も発信して還元したい!という気持ちでした。それが巡り巡って今のキャリアに繋がっています。

Blog始めました
新年あけましておめでとうございます。 2016年から新たにブログを始めることにいたしました。 コンテンツが揃った時点で公開したいと思います。 きっかけ 仕事でも、自宅(趣味)でのサーバメンテナンスにおいても、インターネット(ブログ)の各種技...

ただそれの経験談を引用し、「だから皆さんもアウトプットしましょう」と言っても、全く響かないんですよね。これが本記事が投げかけるイチバンの本質だったりします。

アウトプットへのハードルを下げる

そんな状況への打開策として、技術広報コミュニティのSlackにてKumadaさんからコメント頂戴しました。

ブログであれば共著、勉強会であれば共同発表など部分的に関わってもらうなどはどうでしょう。
弊社でも若手へのハードルを下げる&負担を分散させる案の1つとしてですが、そういうのがあがってました。

なるほど! これは有効と思いますね。

自分も輝いてみたい、けどアウトプットしたこと無いし、どのようにしたら良いかわからない。
そんな方には、共著/共同発表の形で部分的にアウトプットしてもらう、これは良い手段だと思います。

参考にさせて頂きます。ありがとうございます!

モチベーションに働きかける

私が自社のエンジニアブログ運営で目指していた方向性はこれでした。
発信することで個人の成長と共にキャリア開拓にも繋がるよ!、社外から表彰されたりした人も居るよ! だからみんなアウトプットしようよ!、と。

ただ、これでは響かない人が多いことがよくわかりました
自社には安定志向の社員が多いため、転職を考慮した個人のキャリア開拓を前提とした話とは噛み合っていない ということに由来しているのかと思います。

また自社の人事制度(評価制度)にも組み入れられている訳でもないので、直接的な評価にも繋がらない。
これでは直接的なモチベーションには繋がらない、ということにも納得がいきます。

アウトプットすることによる楽しさとか面白さをアピールする

確かにその通りですね。
但し、コミュニティ活動は何で楽しいのか、面白いのか明文化しようとしたら意外と難しいことに気付きました

  • アウトプットしたものが色々なところで紹介されて(バズって)社内外から褒められた
  • 社外に繋がり、知り合いが増えた
  • 社外から表彰されたり、活躍の機会が増えた

私は嬉しいのですが、安定志向の方においても嬉しいのだろうか、と思うと微妙だなと思いました。
そもそも業務外で社外とコミュニケーションすること自体に興味の無い方々と思われるので・・・

自分が目立ったことで余計な問い合わせが増え、(評価もされないのに)余計に忙しくなった。
プライベートも大事にしたいのに残業が増えた、と言われそうです。

その点、これに関連したAWSマンガは解になるかもしれません。
最終的に自社内にフィードバックして提案が認められるところまで含まれているのが良いですし、SIerのメンバーであっても「コミュニティに参加すれば担当するお客様の課題解決に繋がる提案ができるかもしれませんよ」と言えるかもしれません。

それコミュニティが必要? AWS社等のサポートがあれば良くない?と質問されると微妙ですけど。

未来の自分のために書こう

私も、エンジニアブログをまだ書いたことの無い方に説明する際には同じような説明をしております。

  • 作業メモとか取ると思うので、それを記事化しよう
  • 記事化することで知識の整理になりいいですよ
  • 自分で読み返した際に後日役に立ちます。
  • 発信することで、世の中の「誰かしら」の役に立つことができます

こちらもあまり響いている感触は無いのですが、今後も継続的な取り組みとして行っていきたいと思います。
継続は力なり。

なお、この点に関しては私が師事をするソラコム MAXさんの記事が役に立つので、リンクも貼っておきます。

会社としての意思決定が大事

これは正直羨ましく、そうであれば苦労しないのになぁ…という率直的な感想です。
そういう会社でお仕事がしたいですw

業務時間内に書くべき、業務調整すべき

このご指摘は、最も多くコメントを頂きました。
ごもっともです。

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自社においての状況をご説明しますと、私のマネージメントする範囲のメンバーや所属部署の同僚においては本人の裁量において業務時間内に執筆することを認めています。

但し、前述の通り会社としての方針決定はありませんので、他部署へのルールの働きかけは難しいです。
(他部署の執筆者がどのように時間を捻出し執筆しているかどうかについては関知していません)

なおエンジニアブログ立ち上げ当初の投稿ルールとしては、以下のようにしておりました。

  • 社内ネットワーク(業務時間中)のみ投稿可能
  • 寄稿にあたっては、所属部署の上長にも確認してね

ただ、このルールでは厳しく寄稿が難しい。自己研鑽で学んだことなんだから、上長の許可を経ずとも社外(時間外)にも投稿できるようにしてくれ、との要望が多くあり、今のルールに変更したという経緯があります。

だったら別に会社ブログではなく個人で発信したら?と言われそうですが、私としては「今までアウトプットしていなかった層」に、学んだことをアウトプットする習慣をつけてもらいたいという意図が働いており、実際に発信経験が無かった方に多く発信いただいています。

ということで このテーマは、非常にナーバスであり、且つチャレンジングな話題であるとは理解しています
でも何で当社としては全社的な取り組みにしたいのか。ここへの背景は

  • 今やクラウド担当(自部署)だけでは対応力に限界があり、全社的に「クラウドに強く」しないといけない。アウトプットすることによる成長の場というコンセプトも維持したい
  • いわゆる”配属ガチャ”の結果、クラウドの仕事をしたいのにできない若手がいる
    彼らにアウトプットする場をつくり、光を当てたい

実はここまで考えて施策を進めています。

続いて業務調整せよ、というご指摘。

これについては、採用を強化して人員を増やせば問題の解消に向かいそうな話ではあります。

採用活動は常に行っているのですが、業界全体の人手不足の情勢からなかなか厳しいですね。
また、「エンジニアブログを執筆できる人材はどのような要件を提示したら採用できるのか?」という点でも良くわかっていません。

このコメントを拝見して思ったのが、以下の点

  • ライターを採用
  • 業界著名人や外部ブロガーに発注し執筆依頼

ライターの採用は前述の「採用要件の提示」の面で難しいと感じますが、外部執筆者にコストを払うことについては不可能では無いと思います。
但しこれは、サイトとしての性格を大きく揺るがす話となるため慎重に検討したいと考えています。

執筆することへのインセンティブ、評価ルールを作るべき

また、技術広報コミュニティのSlackで、Kumadaさんからもコメントも頂戴しました。

最近弊社でトライアルとして表彰制度を作ってみました。既に前向きに取り組んでいる人(内発的動機で書いてる人)には副次的なエンハンシングとして、そうでない人にはきっかけになればと考えてます。

なるほど。
実際に表彰制度は検討していまして、方針について部署内で承諾も得ています

ただ、会社としてのコミットメントが無い以上、社内で表彰される「名誉」が主になってしまい、副賞としてはノベルティ(トロフィー?)が最大になってしまいます。結果として人事上の評価につながり給与に結びつくかどうかは保証できませんが、それって嬉しいでしょうか? 

また、やはり内輪のメンバーが目立つ可能性もあり、これを考えると腰が重くなります。
但し無いよりはあった方が良さそうですので、推進したいと思います!

社員への金券の配布は税務処理で厄介ですし、更には契約社員だと・・・?

少人数でも輝けば大丈夫。既存発信者を大事に

なるほど。これは盲点でした。

私の場合は元々育成のニュアンスを含めていたため、執筆者を増やして⇒記事を増やそう!と一辺倒で考えておりましたが、確かにエンジニアブログの執筆者を増やすことは必ずしも無いかもしれませんね。

ネタ切れ状態になることを避けるよう、別の施策で執筆者への支援(インプット)を強化する、少数精鋭へ手厚いサポートをして輝かせてあげる、それも一つの手段ですね。

ウチは改善できました

成功事例の共有もいただきました!ありがとうございます。
こちらは業務志向+モチベーションアップで成功している事例

自社の場合、社内での名誉+ノベルティくらいの表彰でモチベーションに繋がるのかという疑問はありますが、上記で採りあげた話題とリンクしますし、チャレンジに値しそうです。

次はコミュニティドリブンでの成功事例

こちらは継続的に粘り強く取り組んでいく必要がありそうです。

私はコミュニティベースのアウトプットマインドは理解しているつもりではいますので、今の考えは間違っていないようです。めげずに引き続き社内に対して言い続けていきたいと思います。

まとめ

概ね、頂戴したコメントを引用させて頂きました。

最後に1つコメントを紹介

そりゃそうですねw
今後は個人で悩まずに「なんでアウトプットしないの?」って聞いて回るようにしますw

ということでおさらいしますと、私としては以下の検討を進めたいと思います。

  • マインド面
    • 作業メモはアウトプットしよう!と言い続ける
    • 今後もアウトプット方法についての説明・解説を引き続き実施する
      (文書の書き方、WordPressの使い方、etc)
  • インセンティブの検討
    • 表彰制度の企画・推進
  • 執筆者へのサポート強化
    • 若手においては、共著/共同発表への声かけを実施しハードルを下げる
    • 既存執筆者へのインプットを強化する
  • その他
    • 「なんでアウトプットしないのか?」聞く
    • メンバー負荷軽減のため採用を強化する

これ全部自分でやるの?と思うと気が滅入りますけどw 頑張ります。
皆様コメントありがとうございましたー

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